「おじさんっ、ありがとー!!」
ここまで運んでもらった船にブンブンと大きく手を振りながら、は表情が緩むのを抑えることができずに居た。
のおそらく人生で初めてになるであろう自分自身で掲げた目標のための旅立ちは、この帝国領アドニアス港から始まるのだ。
今まで経験したことのないような胸の高なりに任せるまま、は周囲をきょろきょろと見回す。
奥に見える大きな船と、その手前に広がる乗船客と見送りでごった返す光景。
全くもって人生で初めて見る光景には瞳を輝かせながら、自分自身も船に乗り込むためにその人ごみの中にためらいなく身を投じた。
「工船都市パスティスまでですよねっ!?」
「おいおい姉ちゃん、乗る前からそんな調子じゃパスティスに着く頃にはヘバっちまうぜ?」
「だいじょーぶ、体力には自身があるから!それじゃあパスティスまで、よろしくお願いしまーすっ!」
船乗りたちの笑い声を背景に甲板まで駆け足で登ると、はいっそう目を輝かせ思わず感嘆の声をあげた。
人ごみも街並みも小さく見えるのは、港の先に広がる大きな海のせいだろう。
太陽の光を反射してキラキラと煌く水面はがこれまで見てきた何よりも美しく希望に満ち溢れていた。
そして同時に、その途方もなく広がる広大さに自らの存在が如何にちっぽけであるかを感じずには居られない。
自身も、そしてがこれまで見てきた世界も、眼の前に広がる海と比べればどれほど小さなものだろうか。
(リィンバウムには、私の知らない世界がまだまだ広がってる……!!)
海風に吹かれながら、は高揚に身体が震えるのを抑えきれずに居た。
世界は、リィンバウムはこんなにも広いのだ。
そしてその広い世界は同時に寛大にちっぽけな人間たちを包み込み、更にリィンバウムは他の4つの世界に包み込まれている。
広い世界の外に更に広がる巨大な世界は、普通に生きているにはめったに知ることのできない世界。
召喚術と呼ばれる術は帝国内にある程度浸透しており、日々の生活の中でもその召喚術の恩恵をうけることも多くはあるが、
とはいえ実際にその世界や召喚術について知識を持っている人間はまだまだ少ない。
「いいなぁー、召喚術……使えるようになったらきっと、もっと世界が広がるんだろうなぁ」
は瞳を輝かせながらうっとりと呟き、そしてこれまで何度もしてきたようにぎゅっと拳を握りしめる。
世界の広さを思い知った瞬間からは世界そのものに魅了されていた。
だからは魅了されるがままに、躊躇いもなく全力でより広い世界へと飛び込んでいく。
そして今日という日はまさしくにとって世界を一気に広げる日となるのであった。

