「第四位 碧珀明」
名前が呼ばれていく。
ある人は緊張気味に、ある人は誇らしげに、それぞれに返事をしていく。
俺は頭を垂れながら僅かに目を伏せ、そんな声に耳を傾けていた。
奉天殿と呼ばれる朝廷で一番の広さを誇る宮の庭院前に並んで頭を垂れる新進士。
及第順に並んでいるから俺は高官たちからは比較的遠い位置にいる。
だけど俺の勝負はもう始まっていた。
「第十七位 」
「はい」
俺は伏せていた目を開いて、ゆっくりと顔を上げた。
目の前に広がる荘厳な景色に微笑みそうになる頬を引き締めて前に進む。
既に前に進み出て戻っている秀麗ちゃん達の視線を感じる。
俺は背筋を伸ばし、目の前の高官達に真っ直ぐ視線を向けた。
国試を及第しただけの朝廷では箸にも棒にもならない地位の俺たちからは比べものにならないくらいの地位にいる彼ら。
彼らに認められなければならない。
(国試の順位だけで何もかも決まると思ったら大間違いだ)
秀麗ちゃんも影月君も龍蓮も珀明も、俺とは比べものにならないくらい勉強が出来る。
だけど、それだけじゃ仕事は出来ない。
朝廷という組織の中で、六部やらなんやらという組織に分かれている中で、尊重されているのは個人の組織に対する適正だ。
勉強が出来るだけではどうにもならない世界にこれから俺たちは足を踏み込んでいく。
汚い部分も、もどかしい部分も、沢山此処には存在するだろう。
でもそれに負けずに、そして自分の適正を示しながらひたすら食らいついていく。
それが朝廷という場所で俺たちが一番にやらなければならないこと。
(此処まで来たんだ…引き下がれるか!)
目の前に開けた楽園が俺を待っている。
此処まで来たんだ、そのまま突き進むしかないんだ。
(目指せ吏部!目指せ人間観察し放題!!)
いよいよ「花は紫州に咲く」沿いに入りました!
今回は序章って感じでいつもの比でなく短いです。あわわ。