吏部を目指せ!


心 配 の 不 必 要 性 に つ い て

秀麗ちゃん達と別れ、俺が向かったのは朝廷だった。
聞いた話によれば査問は朝議の後、正午から行われるらしい。
秀麗ちゃんの不正及第をでっち上げた人間からすれば本人に現れて欲しいなんて思っていないだろうから、確実に足止めが入る。


「だから珀明、頼む」


「……お前は行かないのか、?」


「顔知られてるし。それに珀明の方が手、出されにくいじゃん」


有名商家よりも彩八家だ。
一応黒幕が同じ人間なので、絡んでくる下っ端と俺は会ったことがあるかも知れない。
そうなるとまた面倒なことになりかねないから俺は引っ込むことにした。
取り敢えず入廷するだけなら静蘭さんもいるし何とかなるだろう。
出来るなら穏便な手段で入廷してもらいたいものだが、最終手段荒療治という手札があるかないかは大きな違いだ。
だから俺はこれ以上秀麗ちゃんを心配しないことにした。
切り捨てる訳じゃない、信じるから心配しない。不安に思わない。
秀麗ちゃんなら大丈夫だろうと思えるから、俺はそれを見守ることにする。


「それじゃ、俺は査問が開かれるまで引っ込んでるよ」


「…査問が終わったら顛末を最初から最後まで聞かせろ、良いな?」


「ん…珀、ありがと」


珀明は俺に多くを聞かない。
付き合いが長いから察していると言うこともあるんだろうけど、珀明の「言いたいことがあるなら自分で言え」っていう付き合い方は好きだ。
俺の事情だって、過去にあったことだって珀明は知っているはず。
それでも皮肉っぽく高圧的に言い放つ珀明に、俺は柔らかく微笑んだ。
安心させるための笑みじゃなくて、安心したからこそ浮かぶ笑み。
やっぱり幼なじみっていいもんだよな、ほんとうに。










そんな俺の努力は実ったらしく、秀麗ちゃんは査問にしっかりと現れた。
しかも朝議で何かあったようで礼部尚書の姿が見えない。
あれだけ派手に動き回ったんだからそれも当然だろうけど。
(後から聞いた話で吏部尚書である紅家当主に罪を振りかけたそうだ。無知って怖い)
当然のように査問での秀麗ちゃんの姿は凛々しく、誰も文句を言えない知性と優秀さを感じさせる応答を繰り返していた。
秀麗ちゃんが口を開くたびに周囲からは感嘆の息が漏れ、そして株を上げていく。


そして査問は何の問題もなく、秀麗ちゃんの実力だけを示して終わった。

査問にはちょっかい出せないので単純に傍観者でした。
原作的くらいマックスを華麗なスルーで通り過ぎつつ、間もなく配属先の話です。